SVOOの語順考察ージェンダー論争は言葉も変える【いい大人がゼロからドイツ語を学ぶ記録|ランチミーティング 7】
新年最初のランチミーティングはEさんの家にお邪魔しました。
クリスマス時期に大量に手作りするというクッキーをいただきながら、前半はほぼ雑談(笑)。
SVOOの「O」は入れ替えられる?
文法に執着しすぎて喋りが上達しない英語(涙)の反省を活かして、ドイツ語はあえて文法を後回しにしてきたのですが、テキストに難解な表現が出てくるとそうもいきません。
Ich möchte Ihnen meine Eltern vorstellen.
あなたに両親を紹介したいです。
----------(心の声)英語で言う第4文型(SVOO)か。第3格の「あなたに(Ihnen)」が先にくるのね。了解。----------
Ich möchte Sie meinen Eltern vorstellen.
あなたを両親に紹介したいです。
----------(心の声)…?そうか、英語では「あなたに」も「あなたも」も「you」だけど、ドイツ語は3格「あなたに(Ihnen)」と4格「あなたを(Sie)」で別の単語があるから*1、入れ替えても意味が伝わるんだな。----------
私:Eさん、ここってIhnenとmeine Eltern、Sieとmeinen Elternをそれぞれ入れ替えてもいいんだよね?
Eさん:それは無理
私:What???
Eさんもなぜ入れ替えNGなのかロジカルには説明できないとのこと。ネイティブの人に文法の質問をするのは申し訳ないですが、感覚としては
■敬いたい人を先に置く:上記の場合「私の両親」よりも「あなた」
■人称代名詞の方(≒短い方)を先に置く:上記の場合「meine/meinen Eltern(2語)」よりも「Ihnen/Sie(1語)」
だそうです。
あとから調べると、この疑問に答えていそうな日本語のページを見つけました。
いわく、上記のようなSVOO構造の文の場合、
■基本的には3格(~に)→4格(~を)の順
■4格が人称代名詞(「Sie(あなたを)」など)になると、代名詞が先に置かれる
さらに一般的に、
■代名詞が並ぶときは必ず1格→3格→4格の順が保たれる
というルールがあるようです。入れ替えてもいいとか単純なものではありませんでした…ドイツ語なめてた(笑)
「次の方どうぞ」で巻き起こるジェンダー議論
Der Nächste bitte! (レジや受付などで)次の方どうぞ。
derは男性系の定冠詞(女性はdie)。名詞の性を覚えるのはかなり苦戦しています。(この場合、「Nächste(次)」は名詞なので、定冠詞derがついています。形容詞的に用いられる場合は、後に続く名詞の性・数・格に従って「nächste」自身も変化します)
私:Nächste bitteでよくないですか?せめて中性のdasでは?
Eさん:しかも昔はdieだった。
私:What???(2回目)
Eさん:7-80年代(※聞き間違いかも)、フェミニズムの考え方が流行ってきたときに、「女性は常に男性の二の次ってわけか?」とスイスでも当時の学生の間でものすごい議論があったの。それが直接作用したのかはわからないけど、いつからか「Nächste」という単語は正式に男性名詞になった。
ドイツ語の名詞は基本的に男性で、特に女性的なものやラテン語族由来の単語が女性・中性に割り振られているイメージなので(ほぼ個人的見解です)、この「Nächsteはどっち」議論は男女平等の意識の変化を象徴する出来事だったのだと思います。
「それくらいどっちでもよくないか?」と思ってしまうのは、私が(少なくとも男女平等という観点で)とても恵まれた環境を生きてきているおかげなのかもしれません。
*1:この認識も間違い。「私たち」と「君たち」の3格と4格は同じ単語。