バレエ旅 in パリ・ロンドン | サイドの席がおすすめ!英国ロイヤル・バレエの「オネーギン」
ロンドンバレエ旅の続きです:
バレエ旅2回目の公演鑑賞は、英国ロイヤル・バレエの「オネーギン」!憎愛満ちたドラマチックな作品です。2月のパリ・オペラ座の来日公演でも「ジゼル」とともに上演していました。
ロイヤル・オペラ・ハウスは席選びが重要
オペラ座の怪人は当日券を安く手に入れましたが、こちらのチケットはかなり前もって(公演日の4ヶ月前くらい)購入していました。友人いわく、座席によって舞台の見え方の良し悪しがかなり左右され、安くて見通しの良い席はすぐに埋まってしまうとのこと。オンラインの一般販売が始まったその日に、友人が会社の回線を使って(笑)頑張って取ってくれました。
友人のおすすめで選んだのは、舞台下手側、Stalls Circle席の最前列。
顔を斜め左に向けて観る感じになります。下手の端や奥は見えにくいですが、舞台との距離が近く、オペラグラスが無くてもダンサーの表情や指先の表現までよく見えます!若干の視界と首の疲労感を犠牲にしている分(笑)、地上階や正面の席に比べて割安です。4人グループであれば同じくらいの位置にあるボックス席もおすすめ。ちなみに座席の料金設定は、この画像のように(解像度が低く詳細は見えませんが)かなり細分化されています。最安で1000円くらいのチケットもありますが、薄ピンク以下の席は柱の近くだったり両極端のサイドだったり遠かったりで、かなり視界が遮られます。音楽となんとなくの雰囲気を気軽に楽しむならアリだと思います。
公式サイトの公演一覧から日時と座席指定のチケット購入ページへ移動できます。(5月現在はオンライン上演以外はすべてキャンセルとなっています…)
グッズショップが楽しい
グッズに興味があるなら開演の1時間以上前にはオペラハウスに到着していることをおすすめします。ショップ面積はパリのオペラ・ガルニエよりは小さいですが、グッズの充実感は負けていません。雑貨も衣類も、バレエ好きの心をわかっている感じで購買意欲をそそられるものばかりです。特にTシャツやトレーナーなどの衣類は、カラーバリエーションもサイズもかなり豊富でした。レッスン用に1枚しか買わなかったことを後悔しています(笑)。
休憩時間も楽しい
「オネーギン」は途中2回の休憩があるので、その間に建物の中を散策。
外から見えていたガラス張りの空間は軽食やディナーが取れるスペースになっていて、休憩時間は人でごった返していました。
私たちはイギリスでは食べ物にお金をかけないと決めていたので(笑)歩き回るだけでしたが、ドレスアップしてお酒とおしゃべりを楽しむ人たちの雰囲気だけ堪能させてもらいました。2階には実際に使われていた古い衣装がロイヤル・バレエの歴史を説明するプレートとともに展示されていました。
さらに、外のテラス沿いにはまさに現在の演目で使用される衣装の工房があり、ガラス張りになっているので中の様子を伺えます(日中は衣装担当の人が実際に作業していると思われます)。なかなか見られない舞台裏の光景にみんなで大興奮(笑)。
ロイヤルオネーギンの見どころ
「オネーギン」のざっくりとしたストーリー構成は以下のとおり。
【1幕】
田舎のお嬢様タチアナの妹オルガが、婚約者レンスキーを連れてくる
↓
レンスキー、親友のオネーギン(イケメン)も連れてくる
↓
タチアナ、オネーギンに一目惚れ。純朴な手紙をしたためる
↓
【2幕】
オネーギン、思わせぶりに手紙を読むかと思いきやタチアナの目の前で破り捨てる
↓
タチアナ、放心
↓
オネーギン、オルガに手を出す
↓
レンスキー激怒、オネーギンに決闘を申し込む
↓
オネーギン、決闘でレンスキーを撃ち殺す
↓
【3幕】
数年後、タチアナは偉い人と結婚し、高貴で美しい女性に成長している
↓
決闘で親友を失ったショックで放浪していたオネーギン、帝都に戻り偉い人のパーティーに参加。タチアナと再会して我が目を疑う
↓
オネーギン、タチアナを愛していたことに気づき、思いを伝えるために手紙を書く
↓
手紙を渡されたタチアナ激昂、目の前で破り捨ててオネーギンを追い出す
↓
オネーギン絶望、タチアナ発狂
どこからつっこんで良いかわからないほどの目まぐるしく情動的な物語です。端折って書くとオネーギンのクズっぷりが際立ちますが、3時間弱かけて生の舞台を観ても、彼は「ジゼル」のアルブレヒトに引けを取らないクズ男でした。
公式の動画でオネーギン役のダンサーたちのコメントがあります。
Thiago Soares and Valeri Hristov on why Onegin is a masterpiece (The Royal Ballet)
テクニックがすごい
世界三大バレエに数えられるバレエ団に対して言うまでもないことですが、ソロの踊りも群舞も全体的にテクニカルな振り付けが多く、観ていてたくさんの刺激を受けました。特にオネーギンとタチアナのパ・ド・ドゥ(ペアで踊るパートのこと)は、コンテンポラリーな要素も含んだ超絶技巧の連続で、瞬きもできずに見入ってしまいました。
「そんな角度からその勢いで飛び込みます?」みたいなハラハラするリフト(男性が女性を持ち上げる)が度々出てきたりするものだから瞬きどころか息も止まっていたらしく、2幕の後はなんだか疲れていました(笑)。
キャラクターが生き生きしている
英国ロイヤル・バレエの魅力の要因は、一つにダンサーの個性と多様性が作品を鮮やかに引き立てていることだと思っています。世界三大バレエの他2つ(ロシアのマリインスキーとパリ・オペラ座)ではダンサーの体型や容姿が今でもかなりシビアに制限されていると聞きます(それが統制された完璧な群舞を実現しているのも理解できます)が、英国ロイヤルのダンサーは、比較的人種が豊富だったり、体型にもばらつきが大きいような気がします。そんな一人ひとりの芯を貫くダンサーが束になって踊る作品は登場人物に生命力があって、観ていてとても楽しいのです。
特に「オネーギン」のような、生々しい人間の憎愛を描く作品は、彼らの得意とするスタイルだと思います。この作品で主役デビューを果たした平野亮一さん演じる済まし顔のオネーギンはどこまでも憎たらしく(褒めてます)、かと思えば終盤タチアナに振られたときの悲愴感は同情を誘います。タチアナ役のマリアネラ・ヌニェスさんによる張り裂けるような感情が描かれたラストシーンには鬼気迫るものがあり、幕が降りた後はこちらもしばらく放心状態に陥っていました。
舞台演出が凝っている
来日公演の「ドン・キホーテ」を観たときにも感じたのですが、幕間の舞台転換やカーテンの使い方など、空間の表現に工夫が凝らされているのも観ていて楽しいポイントの一つです。今回は本家オペラハウスでの鑑賞ということもあり、3幕の華やかなパーティーの場面はきらびやかな客席と舞台が一体となり、まるで本物の舞踏会に自分が参列しているような気分になりました。
”希望の橋”を見上げて
素晴らしい舞台の衝撃に殴られたような顔をしたまま(笑)帰路へ。細い通りの頭上に突如現れるねじれた建造物は、オペラハウスと隣接するロイヤル・バレエスクールを繋いでいます。舞台に立つ時を夢見る学生たちとオペラハウスの架け橋であるこの渡り廊下は、"Bridge of Aspiration(希望の橋)"と名付けられているそうです。
ここ数日で、パリ・オペラ座と英国ロイヤルというまったくキャラクターの異なるバレエ団の踊りを間近に触れられたことはとても貴重な経験でした。心を揺さぶられるような刺激を受け、この感動をどうにか自分たちの踊りに映したいと強く願いました。この日の夜はみんなでいつも以上にストレッチと筋トレを入念にしました(笑)。
バレエ旅の締めは英国ロイヤルバレエの「オネーギン」。友人の勧めで選んだStalls Circleのサイド席はダンサーの表情やオケピの様子まで楽しめます!テクニカルなパドドゥや独創的な舞台転換に感動。3幕ラストのマリアネラ・ヌニェスさんの鬼気迫る演技には鳥肌が立ちました。 pic.twitter.com/TBpeCqq5a6
— kashimo🇨🇭サバティカル中 (@n0daybuttoday) 2020年2月9日