モメラスを踏まぬこと

天文学者の夫と1年限定のチューリッヒ生活

モメラスを踏まぬこと

外出規制から1週間。パンデミックで変わったチューリッヒでの生活

ひと月前まで「なんか中国で流行ってる病気」としか思われていなかった新型コロナウィルスが、一瞬にしてヨーロッパの人たちの生活を変えました。

私の暮らすスイスでも、イタリア語圏のティチーノ州に始まり、今や全土で1万人を超える感染者が出ています。人口1千万人以下の国では最多です。空路の減便や地域ごとの入国規制は徐々に行われてきましたが、ついに先週、実質的な外出規制が敷かれました。現時点で政府が発表している行動制限は以下の通り。

  • 食料品店及び薬局を除く全ての店舗,飲食店,娯楽施設等は4月19日迄閉鎖。
  • 公共の場所(散歩道や公園を含む)で6人以上の集まりは禁止違反した場合は一人100スイスフランの罰金が科せられます。5人以下の場合は最低2メートルの対人距離を確保すること。
  • 衛生及び人と人との距離と確保すること。
  • 通勤,通院,食料品の買い物,誰かを助ける場合を除いて外出しないこと(特に持病のある方及び65歳以上の方)。特に感染の危険がある方は在宅勤務とし,不可の場合は勤務免除とすること。
  • 職場や工事現場においては衛生及び対人距離確保を守り,職場や工事現場にいる人数を減らし,休憩時間及び食堂に6人以上は集まらないこと。
  • 公私を問わず全てのイベントを禁止
  • 全国的に義務教育以上の学校,教育機関の休校を4月19日迄延

そういうわけで、スイスや周辺国のスキー場は前倒しでシーズン終了し、フランスやドイツと連絡していた国鉄も国境手前で折り返しかつ減便、 航空便も大部分が欠航。(ほとんど外に出ないので全貌はわかりませんが)街全体がひっそり静まり返っています。

書き溜めていたヨーロッパ最高!なノリの旅行記事を公開する気分にもなれず(笑)、しばらくブログを放置気味にしていましたが、敢えてあまり面白くないロックダウンの日々を綴ることにしました。

 

 

街に人がいない

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チューリッヒのショッピング街の中心

最初の頃はみんな気楽で、サイクリングやランニングをしている人をちょくちょく見かけていましたが、数日経つとそれも激減しました。一度買い物のために街の中心部にでかけた際は、バスも電車もトラムも車両ごとに一組いるかいないかでした。

普段はキセル防止のため定期的に検札をする係員が乗ってきますが、今は長距離列車も含め改札なし。運転手に近づかせないように最前列にはロープが引かれています。

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トラムもほぼ貸し切り

近くの駅前の道路は、人通りが少ないチャンスを狙って大規模工事を進めています(笑)。

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こんなときに働いてくれている人には感謝しかありません

急な帰国が決まった友人のお見送りに立ち寄った(これも本当はダメ)空港も静か。微妙な距離感を保ってお別れでした。

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人気のないSWISSカウンター

お喋り好きな人々の憩いの場だったカフェやイートインスペースも閉鎖されています。

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デパート内のイートインスペース(スーパーのフロアだけ営業中)

買い占めは深刻ではない

買い物ができるお店はスーパーと薬局だけ。屋外は本当に人がいませんが、スーパーの店内はそこそこ賑わっています。営業が許可されている店舗でも面積あたりの入店可能人数が制限されているので、入り口で番号札をもらってから入店します。混雑しているときは、前の人の買い物が終わるまで中に入れない仕組みになっています。

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入り口で番号札を受け取ります

タイミングによってはトイレットペーパーの棚が空だったり、あらゆる野菜が売り切れていたりしますが、別のスーパーに行けば普通に売っていることが多く、ニュースで見る日本のようなパニックは起きていないように思います。

ただし、薬局で取り扱うマスクや消毒用アルコール(これらはスーパーやコンビニではそもそも買えない)は、2月半ばから品薄の状況が続き、特にマスクはまず手に入らなくなりました。当初は特に市内で中国人観光客による買い占めがあったとも聞きますが、中国からの渡航が実質禁止になった後も状況は変わっていません。

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50枚25CHF。これより小さい単位では販売されていませんでした

マスクは頑なに着けない

ヨーロッパの国でマスクを着けていると、とんでもない重病人だと警戒されます。なぜここまでマスクが浸透しないのかと不思議に思っていましたが、ヨーロッパの多くの国では、公共の場で顔を隠すことを規制する覆面禁止法が定められていることを知り納得しました。チューリッヒでもマスクなどで顔を隠した状態でスーパーなどに入ることができないそうです。

基本的に医師から指示を受けない限りはマスクはしないそうですが、今は国から感染拡大防止策の一つとしてマスク着用が提言されています。これで誰もが着用することになるのかと思いましたが、そうでもありません(笑)。確かに1月末あたりから、非アジア人のマスク姿を徐々に見かけるようになったので、平常時に比べると(ヨーロッパ人にとっては)異様な光景のようです。それでも、「マスクをしていないと白い目で見られる」といった状況とは程遠く、薬局の在庫がいったいどこに消えたのか不思議に思います。一般家庭に備蓄されてお蔵入りしているくらいなら、せめて医療従事者の元に供給されていることを願います。

www.swissinfo.ch

引きこもり生活はいつまで続く

学校は休校期間を4/19から4/30まで延長。友人の親戚の子供は、学校から提供されるオンラインでのプログラミング教育を受けているそうです。大学も原則敷地内に入れないため、教員や研究員も在宅勤務です。特別な機器や実験設備が必要な分野の方は特に苦労されていると思います。

私は何もなくてもできれば家に引きこもっていたいタイプなので(笑)、変わったことといえばバレエに行けないこと、夫が常に同じ空間にいることくらいです。それでもイースターが消滅し、スイスの伝統的なお祭りも中止になり、春が近づき彩りを取り戻すチューリッヒの街を歩き回れないのは心苦しいものがあります。

少しでも早く平和な日常を迎えるために一市民にできることは、この厳しい状況の中で私たちの生活を維持している医療従事者やスーパー・薬局のスタッフたちに感謝しながら、人混みを避け、手を洗い、家でじっくりと待つことです。