モメラスを踏まぬこと

天文学者の夫と1年限定のチューリッヒ生活

モメラスを踏まぬこと

週末旅行、Genève編|5年ぶりのCERN一般公開!

Genève駅からCERNまではバスで20分ほど。

アプリで9時から翌日5時まで使えるチケット(5.6CHF)を購入し、駅のすぐ脇にあるCornavinから出発です。

 

バス停に着いた時からただならぬ予感はしていましたが、朝9時過ぎの時点でものすごい人。スイスに来てから一番混んでいるバスでした。

Genève駅でバスは満員になるので(日本のラッシュに比べたら十分余裕があるのですが)、その先の空港から乗ろうとする人は何本もバスを見送っていたようです。

 

到着するとまず見えるのが、CERNのシンボル(?)、「globe」。

正式名称はLe Globe de la science et de l'innovationというそうです。

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で、目当てのATLAS検出器ツアーの入り口もここなのですが、まずは入場のための登録が必要。

その入場者用のリストバンドを得ようとする人たちが、すでに300mほどの行列になっていました。完全になめてた。

 

私たちは一応、前日に事前予約(入場を保証するための登録)をしていたのでさすがに入れるだろうと思い、その列に並びました。

久々に汗ばむ暑さの中列を進むこと20分(以外と早かった)、リストバンドをゲット。

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準備が整いいざATLASエリアへ!と向かうと、なんと入り口の門が封鎖されています(笑)。 このOpen day専用のアプリで確認すると、すでにATLASツアーはクローズド。先着1500人しか入れないという友人からの事前情報もあったのですが(そんなに少ないのかと本人も驚いていた)、まさか開場2時間で締め切られるとは。。

 

門の前はなんとか中に入ろうと押し寄せる人でちょっとした騒ぎになっていましたが、私たちは諦めて別のエリアに向かいました。

 

とにかくシャットダウン中にしか入れないLHC(Large Hadron Corrider)の地下設備を見ようということで、直通バスでフランス側にあるALICEエリアに向かいました。*1

 

こちらもものすごい行列ですが、もう並ぶしかない。

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アプリによると2時間待ち

検出器の断面図イメージはこんな感じ。

 

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これを1時間半眺めた


炎天下(と言っても27度くらい)の中みんな朦朧としながら待ち、1時間半ほどで中に入れました!

ツアーは言語(仏・英・伊・西?)ごとに分かれた10人弱のグループで、ガイドの資格を取った研究者の方が順に案内してくれます。

 

エレベーターで地下に降りると、粒子が加速しながら走り抜けるビームラインが、視界の先まで続きます。これが日本の山手線くらいの大きさで、フランスとスイスの国境をまたがって地下に埋まっているのです。

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KEK(筑波にある高エネルギー加速器研究機構)の名前とロゴが入った筒もありました。

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そして、いよいよ検出器部分へ!

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写真だとわかりづらいですが、全体の高さが15mくらい。ATLASほどではありませんが、巨大です。

山手線を時計回り・反時計回りにそれぞれ光速に近いスピードで加速されてきた原子核が、この筒の中で衝突します。その衝突によって発生した様々な種類の素粒子が、外側の赤い部分によって発生させられる強い磁場によってその進路を曲げられます(ローレンツ力ってやつです)。

各粒子が軌道を描くその通過位置・時間・エネルギー損失を高精度で測定することで、その粒子の正体を識別することができるのです。

ドーナツの輪の部分に何種類もの検出器が敷き詰められ、その一つひとつは世界30ヵ国から集まった1000人もの研究者の手によって作られています。

 

写真でしか知らなかった検出器本体を間近に見ることができて、長時間並んだ甲斐がありました!

 

これでとりあえず心は満たされたところで、再びATLASエリアへ。

相変わらず門は閉まっていました。

中にはまだ長い列ができているので、粘っていれば入れたと思う(入場予約もしていたし)のですが、「16時現在で2時間待ち。閉場は18時。諦めた方がお互い幸せよ」とスタッフが力説していたので(笑)、今日のところは帰ることにしました。

 

もともと2日目はGenèveとLausanne観光をしようと思っていたのですが、やっぱりATLASは見たい。たまたまスイスに住んでいるタイミングに、施設の長期間シャットダウンが重なるなんて二度とない。ということで、明日の朝にリベンジするとして、今夜は美味しいものを食べてのんびりします。

*1:LHCには幾つかの実験グループがあり、ヒッグス粒子崩壊の観測で一躍有名になったATLAS、CMSもその一つ。ALICEはそれらとはまた別の物理的な目的を持つ